がん専門薬剤師や抗菌化学療法認定薬剤師は人気があってやりがいがあるよねー!
でもその他にも薬剤師として専門性を活かせる分野があるよ!
NST専門療法士なんてどう?
NST?NSTって栄養の事ですよね?
栄養の事は薬剤師あまり関係ないんじゃないの?
そんな事ないよ!
NSTは薬剤師の知識が十二分にも生かされるポイントはある!
薬剤師の世界でも専門性を生かすために多数の資格が存在します。
その中でもがん領域や抗菌薬領域は専門薬剤師の花形とも言える存在です。
あまり知られていない専門薬剤師としてNST(栄養サポートチーム)専門療法士と言う資格があります。
KOUTYは今の病院に勤務して2年目からNSTに参加しチーム医療に参加してました。
そして今から4年程前にNST専門療法士の資格を取得し、現在もNSTの中の薬剤師として日々切磋琢磨しています。
今回はNSTについて書きたいと思います。
- NST(栄養サポートチーム)とは?
- NSTに薬剤師がいるメリットは?
- NST専門療法士の取得方法は?
- NST専門療法士取得に必要な参考書は?
contents
NSTとは?
NSTとはNutrition Support Teamの略で和訳すると『栄養サポートチーム』です。
NSTの存在意義としては入院患者に最適な栄養療法を施す事により退院期間の短縮はもちろん、感染症や合併症を防ぐ効果もあると言われています。
- 患者の嗜好や嚥下能に応じた食事調整
- 点滴(PPN、TPN)の内容検討
- 経管栄養投与の手順や投与速度の検討
- 検査値より栄養状態の把握
- 口腔ケアや口腔状態の評価
NSTの活動内容は大まかに言えば上記の通り。
他職種が患者の栄養の事を考えるチーム。
それがNSTです。
ちなみに診療報酬上では何点加算されるのでしょうか?
栄養サポートチーム加算(週1回) 200点
*歯科医師が一緒にカンファレンスする事で、歯科医師連携加算として50点上乗せできます。
患者さん1人あたり2000円保険上請求する事ができます。
『カンファレンスまでして2000円!?安っ!!!』
と思いの方もいらっしゃると思います。
しかし栄養状態を良くし退院する事で、病院の回転率を上げる事もできるので
2000円以上の価値があると僕は思ってます。
NSTはどんな職種で構成されているの?
ではNSTはどのようなメンバーで構成されているのでしょうか?
- 医師
- 歯科医師
- 看護師
- 薬剤師
- 管理栄養士
- 理学療法士
- 言語聴覚士
このような職種でNSTは構成されています。
各々の職種の観点で患者さんの栄養状態を評価し改善するためには何ををすれば良いか?とカンファレンスで検討します。
NST専門療法士を目指した理由は?
僕がNSTを目指した理由を少しだけ書きます。
あれは病院で働き出して2年目の頃。
初めて病棟に上がり息を巻いてやる気を出している時。
服薬指導をして薬を飲んでいる事を患者に確認し満足気に仕事をしてました。
しかしその患者さんは一向に体調が良くなりません。
食欲がないのか点滴をしている。
ご飯は食べていないけど、点滴をしているから大丈夫だろう(この頃点滴の内容なんか気にも止めてなかった)
僕は薬剤師だし、薬をしっかり飲んでいる事を確認すれば良い。
それが僕の仕事だ。
そんな風に思っていたと思います。
この患者さん実は栄養が足りておらず、どんどん衰弱するばかりでした。
途中からTPNを開始し、少しづつ元気になり食事を摂れるようになり退院した。
ここで気づいた。
『いくら薬を飲んでも、栄養状態が悪ければ薬を飲んでも意味がないかもしれない』と
人間食べる事が基本です。
栄養状態は人間の根っこになる部分。
薬だけ飲まして満足し、患者さんの状態回復について無関心だった自分が恥ずかしくなりました。
輸液は学生の頃から苦手で、今まで学ぶ事をできる限り避けていた。
あの時輸液の事に関して考えていれば、あの患者さんはもっと早く退院できたかもしれない。
それから病院には患者さんの栄養を考えるNSTなるチームがある事知り、これは輸液の勉強をする良い機会かもしれないと思いNSTの扉を叩きました。
薬剤師が栄養の事を考える。
学生の頃はこんな事考えもしなかったけど、実際に臨床で働くと栄養って大事だとつくづく思います。
NSTが薬剤師に求める知識は?
ではNSTが薬剤師に求める事は何でしょう?
実際にNSTの薬剤師として約7年間勤務して感じた事を書いてみました。
- PPN、TPNの内容検討
- 電解質バランスの計算
- 便秘の際の投薬提案
- 下痢の原因
- 嘔気や食欲不振の原因
第一に『輸液の内容が正しいか』
これは薬剤師さんが一番詳しいと思われています。
カンファレンス中にDrからいきなり…
『TPN始めようと思うけど、どんな内容が良い?』と聞かれる事もしばしば。
そこで投与カロリーやタンパク質量、電解質バランス等を考慮して提案します。
後は消化管トラブル(便秘や下痢、嘔気や食欲不振)の原因があった場合、
現在使用している薬の副作用の可能性があるか聞かれます。
添付文書で分かるものもあれば、臨床経験が物を言う事例もあります。
以前経験したのは、水様性の下痢が止まらない患者さんが居ました。
経管栄養の投与速度は問題無いし、便培養の結果でCDも陰性。
って事は薬の副作用か?
使用している内服薬を全て調べました。
添付文書上では下痢が問題となる内服薬は無かったです。
しかし一つだけ気になる薬品がありました。
ランソプラゾール。
なんて事は無いPPIですが、症例報告ではcollagenous colitisという薬剤性の下痢を発症している症例が多数報告されていました。
一応念のためNSTで提案したんですが、何とランソプラゾールを休薬し、すぐに下痢は改善しました。
内視鏡にて細胞診もしましたが、ランソプラゾールによるcollagenous colitisで間違いないとの事でした。
あの時僕が提案してしなければ、ずっと下痢が継続していたかもしれない。
薬剤師だからこそ、薬の事を一番知っていなければならないと実感したケースでした。
あとは便秘や下痢、嘔気、食欲不振の時に使用する薬剤についても、NSTで聞かれる事が多いので一覧表などにして整理しておく必要があります。
薬剤師がNST専門療法士になるメリット
薬剤師がNST専門療法士になるメリットを何点か書きました。
輸液に詳しくなる
先ほども述べましたが、これは嫌でも詳しくなります笑
開始液や維持液の組成や使用目的…学生の頃はさっぱり分からなくて嫌いでした。
仕事で必要となら繰り返し勉強するのみ。
今では輸液の知識は僕の武器の一つであり、Drとある程度対等に話せるぐらいまでになりました。
人間死ぬ気で勉強すれば大抵の事は何とかなるもんです。
濃厚流動食について学べる
一般の患者さんに濃厚流動食と言っても何のことか分からないと思いますが、濃厚流動食はドラッグストアやスーパーにあるこれです。
メイバランスって聞いた事ないですか?最近良くドラッグストアで見かけます。
これは1カップ200kcal、タンパク質7.5g含有されており効率的に栄養を補える食品です。
薬剤師をしているとこう言った知識は不要と思われますが、NSTの薬剤師となると話は別です。
こういった濃厚流動食は腎機能や肝機能に応じて使い分ける場合があるので知っておく必要があります。
薬剤師として病棟業務をしていると食事摂取量と輸液に入っている電解質を計算して電解質が不足しているので補正をDrに依頼する事があります。
意外と濃厚流動食の知識はNST以外でも役に立ちます。
チーム医療に参加する事で疾患に詳しくなる
薬剤師さんは真面目な方が多いので良く参考書を読みます。
参考書で疾患の事を学びますが、実際に薬剤師の知識だけでは分からない点があります。
NSTのようなチーム医療には必ずDrが居ますので、気になる疾患についてはDrに直接聞く事もできます。
普段私は消化器領域のDrとNSTをする事が多いので、消化器領域の疾患については大分詳しくなりました。
参考書で勉強するのも決して悪くないんですが、直接DrやNSTメンバーから疾患の事を勉強した方が記憶にも残りますし効率も良いです。
チーム医療は自分の知識を向上させる点でもメリットと言えるでしょう。
学会発表の際に活かせる症例を見つける事ができる
病院に勤務していると学会に行く機会もあります。
症例発表等で発表している薬剤師さんを見ると、
『自分もいつか学会で発表してみたい』と思うようなりました。
NSTをしていると興味深い症例に出会う事もあります。
私は病院に勤務して10年ほど経ちますが、NSTをしていたおかげで数度症例発表で学会に参加した事がありました。
発表するまでは緊張でとても辛いのですが、発表が終わった後は何とも言えない充実感に満たされます。
薬剤師の皆さんも是非学会発表をしていただきたいです。
NSTの薬剤師として活動する事で学会発表のチャンスが舞い降りるかもしれません。
NST専門療法士になるためには?
ではどうすればNST専門療法士になれるのか?
日本臨床栄養学会(NSTの学会)のHPより抜粋しました。
第6条
栄養サポートチーム専門療法士認定規程より抜粋
NST専門療法士の認定を申請する者は、次の各号の資格を全て満たす者であることを要す。
(1)日本国の以下に掲げる国家資格を有すること。
認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師
(2)当該国家資格により5年以上、医療・福祉施設に勤務し、当該施設において栄養サポートに関する業務に従事した経験を有すること。
(3)本学会学術集会に1回(10単位)以上、本学会主催のNST専門療法士受験必須セミナー(旧JSPEN臨床栄養セミナー、コ・メディカル教育セミナー10単位)に1回以上参加することを必須とし、この単位数を必須単位数とする。必須単位数30単位以上を有するか、または、必須単位数に加え、本学会が認める栄養に関する全国学会、地方会、研究会への参加単位数の合計が30単位以上あること。なお、「バーチャル臨床栄養カレッジ」修了証については非必須10単位を認める。
(4)第4章の規定により認定された認定教育施設(以下、認定施設)において、合計40時間の実地修練を修了していること。
(5)上記(1)から(4)までの条件を満たした後、認定のための試験に合格していること。
まとめますと
薬剤師の資格を有している。
臨床経験は5年必要。
認定教育施設で40時間の研修を終了している。
学会参加や必須セミナーで必要単位を取得している。
NST専門療法士の試験に合格する。
これだけの関門を突破するとNST専門療法士になれるのです。
書いてみると意外と条件多いですが、がん専門薬剤師等に比べると比較的取得しやすい資格になっています。
NST専門療法士取得にかかるお金は?
NST専門療法士を目指すのは良いが、お金はどの程度かかるのか?
これも大事です。
NST専門療法士になるための試験を受験するためには10000円。
もし合格したら認定料として20000円。
NST専門療法士合格後は日本臨床栄養学会に属する必要があるので、毎年約20000円の学会費が必要になります。
その他には必須セミナーの受験料や年に一回開催される全国集会(NSTのお祭りのような物)への参加費、全国集会や必須セミナーへの移動代や宿泊費なども必要です。
合計40時間の実地修練は大きな医療施設ですと、自分の所属する施設で受講する事ができますが、中小の施設ですと実施修練を実施していない施設もあります。
その場合は外部の施設で実施修練をする必要がある場合もあり、別に受講料が必要になるので注意が必要です。
以上大まかに計算しても10万円〜15万円ほど必要です。
施設によっては上記の金額を病院側が負担してくれる所もあるそう。
ちなみに私は移動代と宿泊代は出張費で出ましたが、その他は自己負担です(自己研鑽ですもんね…涙)
NST専門療法士になるための勉強方法は?
では実際にNST専門療法士になった私が実践した勉強法を紹介します。
それはひたすら過去問やガイドラインを読みこむ事です。
これに勝る勉強方はありません笑
もちろん日々のNSTの活動の中でも試験に生かせるポイントは沢山あります。
しかし過去問やガイドラインを疎かにするとNST専門療法士にはなれません。
NST専門療法士なるために必要な参考書は?
では実際に勉強で使用した参考書を紹介します。
NSTをする上で全ての基礎はこれになります。
各疾患ごとに投与エネルギーや必要タンパク質の量などがエビデンスと共に記載されています。
実際に試験ではガイドラインの文言そのまま出題されるので、可能ならば丸暗記するのがbetterです。
先ほどのガイドブックの要点をまとめたもの。
ガイドブックは凄く分厚く、普段携帯するには不向きなので、ラウンド時等に携帯する際に使用し易いです。
ガイドラインを持っていれば必ず必要な物ではないです。
これは必ず買ってください!
実際のNST専門療法士の試験では、ここからそのまま出題されます。
僕はこの問題集を20回以上読み込みました。
問題と答えを丸暗記する程に…笑
これも絶対買ってください!
ここには数年分の過去問が記載されています。
NST専門療法士の問題は、試験終了後に回収され世の中に出回る事はありません。
ですので、過去問を知るにはこの問題集に頼るしかないのです。
実際に私がNST専門療法士を受験した際は、過去問から約1/3程度出題されていたと思います。
まとめ
NST専門療法士は薬剤師以外の職種でも取得可能です。
だから薬剤師の方々は敬遠するのかもしれません。
栄養を疎かにすると絶対患者さんは元気になりません。
NSTに少しでも興味を持ってくれた方がいるのならば、是非栄養について勉強して頂きたい。
栄養の事が分かれば、臨床の現場がもっと面白く興味深くなるかもしれない。
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病院での仕事も少し慣れてきて余裕が出てきたから、専門薬剤師の勉強をしてみようかな。
専門薬剤師となるとがん専門薬剤師や抗菌化学療法認定薬剤師が良いよな〜!