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十全大補湯の使い分け!慢性的に疲れている方や冷え性でお困りの方におすすめ!

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どんな漢方薬

十全大補湯は「補剤」に分類される漢方薬であり、補中益気湯と同じく「参耆剤(じんぎざい)」ですが使用用途が異なります。

補中益気湯は一時的に体力が低下している場合である一方、 十全大補湯 は慢性疾患(膠原病や悪性腫瘍等で体力を消耗)を患っている場合に使用する漢方薬であると言う事です。

補中益気湯については下記記事で詳しく執筆しておりますので、興味がある方は是非ご覧下さい。

構成成分

構成成分
  1. 黄耆(おうぎ)
  2. 人参(にんじん)
  3. 桂皮(けいひ)
  4. 当帰(とうき)
  5. 川芎(せんきゅう)
  6. 芍薬(しゃくやく)
  7. 地黄(じおう)
  8. 白朮(びゃくじゅつ)
  9. 茯苓(ぶくりょう)
  10. 甘草(かんぞう)

構成生薬が10個あるから十全大補湯と言います(分かりやすい!)

構成生薬には地黄、芍薬、川芎 、当帰を含み、

これら4個の生薬を含む漢方薬を 「四物湯類(しもつとうるい)」と言います。

四物湯類
  1. 温清飲:(四物湯+黄連解毒湯)
  2. 芎帰膠艾湯:(四物湯+阿膠+艾葉+甘草)
  3. 七物降下湯:(四物湯+黄耆+黄柏+釣藤鈎)
  4. 十全大補湯:(四物湯+四君子湯+黄耆+桂皮)
  5. 当帰飲子:(四物湯+黄耆+防風+荊芥+疾藜子+何首烏+甘草)
  6. 連珠飲:(四物湯+苓桂朮甘湯)

四物湯は皮膚の乾燥と末梢の冷え(レイノー病、乾燥肌等、血液により身体の隅々まで栄養を送り届けれない状態、漢方医学では「血虚(けっきょ)」と言います)に効果的です。

また胃腸(脾)が疲弊している状態で食事からの栄養を十分に取り込めない状態を「脾虚(ひきょ)」と言います。

十全大補湯は血虚と脾虚、いわゆる気血両虚(きけつりょうきょ)に対する代表的な漢方薬です。

胃腸が弱っている脾虚の状態で使用する代表的な漢方薬「六君子湯」については 下記記事で詳しく執筆しておりますので、興味がある方は是非ご覧下さい。

その他十全大補湯は骨髄機能の改善にも寄与するとされ、がん化学療法を施している患者さんへ使用する場合があります。(婦人科系のケモをされている患者さんに良く処方されているイメージがあります)

また慢性疾患で皮膚の状態が悪化している例として褥瘡(じょくそう)があります。

十全大補湯には黄耆(おうぎ)が含まれています。黄耆には皮膚の機能を改善する効果があります。

褥瘡患者には皮膚の適切なケアとともに十全大補湯および亜鉛製剤(栄養不足で亜鉛が低下していると皮膚の治りが遅くなるので亜鉛を補います)を加えると褥瘡が改善したと言うデータもあります。

亜鉛含有のサプリメントは下記の様な商品がございますので、褥瘡が気になる患者さんは摂取してみるのも良いと思います。

どういう症状に使う?

症状
  • 疲労感(慢性の持病がある)
  • 皮膚の乾燥
  • 冷え(全身)
  • 体力低下(妊娠・授乳中)
  • がん化学療法、放射線治療による骨髄抑制軽減
  • 褥瘡の治癒促進

同効薬との使い分けは?

十全大補湯と共にがん化学療法や放射線治療による骨髄抑制の軽減に効果を示す漢方薬に加味帰脾湯(かみきひとう)があります。

ポイント
  1. 十全大補湯 :骨髄抑制に対する広く全般的な軽減効果と体力増進
  2. 加味帰脾湯 :骨髄抑制の中でも血小板増加に特化している作用がある

その他、加味帰脾湯は柴胡(さいこ)と遠志(おんじ:鎮静作用)が配合されている事から

「不眠や不安など精神系のトラブル改善」にも効果的です。

川芎を除く十全大補湯の構成成分を全て配合している上、 加味帰脾湯と同様に遠志を含む漢方薬が人参養栄湯(にんじんようえいとう)になります。

人参養栄湯には茯苓(ぶくりょう:鎮静作用)、五味子(ごみし:鎮咳作用)も配合されているので呼吸器系の疾患(肺がん、肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患等)に使用する場合もあります。

以上の事を図でまとめるとこんな感じ。

妊婦に使用できるの?

妊婦や授乳婦にも基本的には安全性の高い漢方薬だと思います。

しかし添付文書には「妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠し ている可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」 と記載があります。

気になる方は婦人科を受診した際にかかりつけ医に相談する方が良いでしょう。

まとめ

慢性疾患があり倦怠感が持続する方や冷え性(体温が低く、全身の冷えを自覚)がある方にお勧めの漢方薬だと思います。

その他がん化学療法にて闘病中の方で骨髄抑制作用が強く出たりする方にも是非服用して欲しい漢方薬です。

がん化学療法は続けてこそ効果がありますし、骨髄抑制作用が強すぎて抗がん剤の投与量や投与間隔を減らす事は治療の効果判定としてはできる限り避けたい所です。

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病院薬剤師の端くれ。 現在消化器科病棟、ICU病棟担当。 NST専門療法士(栄養サポートチーム)の薬剤師として活躍してます。 まだまだ修行中の薬剤師ですので、もし間違えた事を記載しているのであればご指摘頂けたら幸いです。 TwitterとInstagramも随時更新中なので応援お願いいたしますー!(コメント頂けるとモチベーション上がります笑)